Hydroptical Thermal Feedback (UIST ’24)
可視光による知覚水温の高速切替(English)
論文:
Sosuke Ichihashi, Masahiko Inami, Hsin-Ni Ho, and Noura Howell. 2024. Hydroptical Thermal Feedback: Spatial Thermal Feedback Using Visible Lights and Water. In Proceedings of the 37th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST ’24). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 104, 1–19. https://doi.org/10.1145/3654777.3676453
概要
水温を瞬時に切り替えるにはどうすればよいでしょうか?
光を使って水温の感じ方を変える方法を UIST ’24 の論文で提案しました。
我々は、冷水中の皮膚へ光を当てることで温水感覚を生じさせられることを発見し、「hydroptical (hydro: 水 + optical: 光)」法と名付けました。水は透明で可視光をあまり吸収しないため、可視光を用いることで水を温めることなく水中の皮膚を直接加熱できます。そのためHydroptical法では、水温を変えることなく温水と冷水の感覚を切り替えることができます。
応用例
インタラクティブな水温提示(水温の切替)
Hydroptical法は自在に切り替わる水温体験を、ゲーム・VR・銭湯・映画などへ導入します。
以下の例は、海から温泉へと瞬間移動するVRです。本来、物理世界では起こりえないような一瞬の水温変化も、本手法では体験可能です。銭湯で温浴と冷浴を自在に切り替えることもできるでしょう。また、ヒーターで実際に水を温めるよりも省エネな温水体験を提供する可能性があります。
人・領域別の水温カスタマイズ
Hydroptical法を用いると、同じ水のなかでも空間的に異なる水温を生みだせます。
以下の例では、2人が同じ足湯に浸かっていますが、右の人(光が当たっている方)が感じる水温のほうが左の人の水温より高くなっています。このように、銭湯やプールで場所ごとに水温を変えたり、人ごとに(寒がりの人と暑がりの人など)設定を変えることで、水浴体験をカスタマイズできます。
心理物理実験
本研究では4つの実験を行い、本手法の様々な知覚特性を調査しました。詳細については論文や動画をご参照ください。本稿では要点のみ記します。
実験1: 効果の検証・光の色による効果の比較
知覚水温が上昇することが、計測・主観評価の両方で示されました。
寒色(波長が短い光)のほうが暖色より効果的に知覚水温を上昇させることが示されました。下記グラフの色は比較した光の色に対応します。
実験2: 調整能力と反応速度
光の強度により感じる温かさの度合いが変化することを示しました。
LEDの点灯後、ユーザーが温かさを感じてボタンを押すまでにかかる時間を計測すると、約1.5秒以内であることがわかりました。
実験3: 温かいところ・冷たいところの移動(仮現運動)
複数のLEDを一定の遅延を入れて連続的に点滅させることで、滑らかに温かく感じる部分が移動していくことを示しました。
実験4: 水温錯覚
実験1~3では手のひらだけに光を当てていたため、水温が変わったように感じるというよりは、冷水中で手のひらに温かさを感じるという体験でした。
実験4では、水に浸かっている皮膚全域に光を当て、あたかも水温が変わったように感じるのか調べました。 結果として、25℃の水中で最大38℃の温水知覚が生じました。
論文
Sosuke Ichihashi, Masahiko Inami, Hsin-Ni Ho, and Noura Howell. 2024. Hydroptical Thermal Feedback: Spatial Thermal Feedback Using Visible Lights and Water. In Proceedings of the 37th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST ’24). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 104, 1–19. https://doi.org/10.1145/3654777.3676453